2018年4月27日金曜日

カプ・レヒレと霧の向こうの幽霊船《序章》


ケーシィ
いつも本を読んでいる聡明な少年。かしこさ担当。
しょっちゅうクラスメートに宿題を教えてくれとせがまれる。








ラクライ
バチバチと火花を散らす活発な少年。体力は一番だが頭は弱い。
凄腕の探検家・ライボルトを父に持つが、将来はパティシエになるのを目指している。






クマシュン
病院の院長の子供。ケーシィやラクライより幼いが頭は良く、
飛び級でケーシィたちと同じ学級に入った。いつもゴム長靴を履いている。









◆序章◆

カプと5つの大陸


ずうっと昔……
世界には「5つの大陸」が存在したんだって

《水の大陸》、

《風の大陸》、

《砂の大陸》、

《草の大陸》、

それから《霧の大陸》。


《水》を除いた四つの大陸には
それぞれ、「守り神」と呼ばれる伝説のポケモンがいたんだってさ。


大昔のポケモンは偉大な彼らの事を、敬意を込めてこう呼んでいたらしい……


《カプ》……と。






「おっケーシィ!いたいた」

一人で読書していると、クラスメートのラクライとクマシュンがやってきた
僕は読んでいた本をぱたりと閉じた。

「やあ。どうしたの?
二人一緒で図書館に来るなんて珍しいね。」

二人ともバッグをぶら下げているから、学校の帰りなのだとすぐ分かった

クマシュンはときおり図書館に来るけれど
ラクライは滅多にここへは来ないのに、今日はどういった風の吹き回しだろう?

「あのねー。ラクライがね。
昨日の数学の宿題が分からなくてベソかいてるの。」

……がっくし!!

またなのかいラクライ……いつもの事だけど。

「こんにゃろ!余計なコト言ってんじゃねーよ……
正直に言えよクマシュン、おまえも宿題が分かんなくてケーシィに教えてもらいにきたんだろ?」

クマシュンは「エヘ」といたずらっぽく笑い
僕の隣に駆け寄ると、長靴を脱いでちょこんと椅子の上に座った。

「お菓子がねー。いっぱいあるんだよ。」

クマシュンはバッグからごそごそと、小さい袋を取り出してポンと机に置いた
袋の中にはクッキーやキャンディーがたくさん入っていた
これ全部、ラクライが作ったお菓子なんだって。

ラクライは将来、パティシエになりたいらしくて、
よくお菓子を作ったりしてるんだってさ。男の子なのにかわいらしいよね。

仲良く机を囲んだ僕たちを見て、司書のハハコモリさんがこっちへきた

「宿題するのはいいけど、
図書館だから静かにしてちょうだいね。」

ハハコモリさんは、僕たちが頷くと優しそうに笑い
オレンのジュースをサービスしてくれた。

「よっこいしょっと!」

ラクライは帽子とバッグをわざわざ、反対側の誰もいない椅子の上に置いてきたあと、
戻ってきてジュースをがぶがぶ飲みはじめた

帽子をとったラクライの頭は、
毛がふわふわっと跳ねていてまるで寝ぐせみたい。

モフモフしていて、さわったらとっても気持ちよさそうだよね……



僕とラクライとクマシュンは同じ《クラル・ベルク校》に通うクラスメート。
ただし、それぞれ時間割が異なる

いつも一緒に授業を受ける訳じゃないし、帰る時間もバラバラ。

僕たちの学校では、生徒は一部の必修科目を除いて
どの教科を優先して受けるのかを"自分で選んでもよい"決まりになっている

たとえば学者さんになりたいのなら、数学の他にも物理や幾何学を受けてみてもいいし
運動がきらいなら体育の科目を最小限に減らす事もできる。

子供の内からそうやって「じぶんには何が必要で、
何が要らないか」を自身で選ぶ……それが『中央の島々』の方針なんだってさ。

僕は、今日はアブリボンさんの幾何学の授業だけを受けて
あとはずっと図書館で読書している

ここでは落ち着いて本が読めるし、優しいハハコモリさんにも会えるからね。




「ね、さっきから何読んでるの?」

ふいにクマシュンが僕の読んでる本を気になりだした

「大昔、4つの大陸をそれぞれ守っていた伝説のポケモンについて
書き記された書物だよ。」

古くてぼろぼろに色褪せたその本を、僕は二人に見えるよう机の上に置いた


題名(タイトル)は、
『4体のカプ』


《カプ》の名を持つ4体の守り神……

風のコケコ、火山のテテフ、
草原のブルル、そして霧のレヒレ。


今はもうどこにいるのか、存在しているのかさえ分からない
"幻の存在"となった4体のポケモンたち。

中でもとりわけ、僕はカプ・テテフがお気に入りかな

テテフには「エスパータイプのポケモン」をパワーアップさせる不思議な力があるらしくて
その上、明るくて可愛い女の子なんだってさ。

本に描かれたその愛くるしい絵……
それは僕をまるで、チョウチョのように軽快に空を舞う気持ちにさせた。



「あ。このレヒレってさ、
俺の父ちゃんと知り合いなんだぜ!」

ラクライが《霧のレヒレ》を指さして言った

ラクライのパパは高名な探検家とは聞いている
だけど、伝説のポケモンと知り合いだなんて初めて聞いたよ。

「本当だってば!
嘘だと思うなら明日、俺んちに来いよ!」

ラクライは自信たっぷりにそう言った


そこまで言われたら、僕でも気になる……

翌日、僕はクマシュンと一緒にラクライの家へ行く事になった。




《上》へつづく



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