2016年12月5日月曜日

Chapter3:潜入!市役所

「おい、開かないぞこの門!」

Vボードに乗って軽快に空を飛び、市役所にやってきた俺たち三人は
完全に閉じられている門にボーゼンとした。

おかしい……
リザードンさんの方針で、市役所は子供でも誰でも自由に出入りできる
オープンな場所になったはずなのに……

今日に限っては、まるで部外者を締め出すかのごとく、
目の前の門は堅く閉じられている。

格子の隙間から中を見渡しても、敷地内には誰もいない。

いつもはナース帽をかぶった「ハピナス」っていう可愛い姉ちゃんが
鼻歌うたいながらお花の手入れをしてて、ニッコリと手を振ってくれるのに、
今日はその姿さえも見当たらない。

いつもと違う市役所の様子に
ピィもププリンも、とまどいを隠せていない。もちろん俺もだ。

こんちくしょう!大事な用があるって時に限って、
中に入れないたぁどういう了見だ。

向こうがその気なら……こっちにだって考えがあるぜ。
俺はピィとププリンを連れて裏へと回った。



「で、どうすんのよ?」

ピィが怪訝そうな表情を浮かべている。
俺は「見てな!」と言い放ち、塀を囲むモコモコとした茂みのうちの一ヵ所を
手でひっつかんで、力いっぱい引き抜いてみせた。

「いつの間にこんなものを……」

二人は口をあんぐりさせながら、俺のつくった"抜け道"をじっと見つめた。

ふっ、こんな事もあろうかと茂みの一部を切り取って、
ダミーにすりかえておいたんだ。

3年前やさぐれてた俺が、いつでも市役所を乗っ取れるようにと細工したものだが、
まさかこんな所で役に立つとはな!

ププリンが「やめようよ」と弱気な事を言い出したが、俺のハラは決まってるぜ。
二人とも結局、中へついてくることになった。

"抜け道"を通って敷地内に入った俺たちは
そばにあった木を登り、2階の窓からまるでドロボーのように
市役所の中へと潜入した。


「誰もいないね……」

中に入った俺たちは、辺りをキョロキョロと見回したが
やはり誰一人見当たらない。

おかしい……静かすぎる。
だが、今はそんなこたぁどうでもいいぜ。

一刻も早くリザードンさんに事情を話して
どっかへ消えた俺の入学案内書を、この手で取り戻してやるんだ!

俺たちは3階にある「市長室」を目指し、
不気味なまでに静寂に包まれた廊下を歩いて、階段をのぼった。

3階へ辿りつくと、俺たちはギョッとして固まった。

「……げっ!グランブル署長じゃねぇか」

いかつい顔で、いつも怒鳴りまくっていてタチの悪い、
ポケットタウン警察を取りしきる大ボス……俺たち子供の宿敵だ!

くそう!何であんな奴が市役所の中をウロついてるんだ。
もし見つかったりしたら……ゲンコツをもらった上にどえらく説教されるという
恐怖のフルコースが待っているに違いない!

ここはとりあえずUターンし、反対側から行くしかないな。

俺たちはどっしりと身構えてるグランブルを避けて、
やむなく別の道を進むことに決めた。

あいかわらず、廊下には誰もいない……

もしかすると今この建物には、さっきのグランブル署長しかいないのか?
だとすりゃ嫌すぎる……俺はだんだんと不安に駆られた。


「何がきこえる……」

コソコソ歩いていると、
ある部屋から話し声がきこえ、俺たちは立ち止まった

俺は扉に近づいて、聞き耳を立てた。

すると老人っぽい、
聞きなれた感じの声がしてきた。

「ウムム。まずい……とてもまずいですな。
年々と悪くなっていく一方ぢゃ。」

この声と喋り方……
まさかな……

「ここにきてポケッ島にある、全Vウェーブの濃度ががくっと下がるなんて……
何かよくない災いの前触れだったら嫌ですね……それに……」

今度はオンナの声。
おどおどしてて、怯えているような感じだ。

このオンナ、途中から聞いたこともない単語や言葉を連発し、
よくわからん話のオンパレードだったので、俺はさらりと聞き流すことにした。

しばらくすると、また別の声がきこえた。

「何が言いたいのさ。ぜんぶ僕の街が悪いっていうの!?」

今度は子供の声だ。
たぶん俺たちと同じぐらいの年齢か?

声の子供は怒っているようだった。

「デイズマリンはリゾートの街として名高く、例年「他の島々」から多くの観光客が訪れている。
VヒーターにVボードにVサーフ……
それらの使用量はすでに、ポケッ島のどの街をも上回るのは確かだ。」

この声は……リザードン市長!
やっぱここにいたのか!

俺はすぐに扉を開けたい衝動に駆られたが、
会話の続きが妙に気になったため、ぐっとこらえる事にした。

「そんな事いわれても……じゃあシルヴァディはどうなのさ?
Vウェーブの使用量をごまかしてるって噂や、いろいろ黒い話もよく聞くし。」

さっきの子供の声だ。

「ご冗談を。全て根も葉もないこと……
不毛な話はよしましょう。」

初めて口を開いたそのポケモンは、
物腰柔らかくて、それでもどこかダークな感じがする声の持ち主だった。


一体こいつら何の話をしてるんだ……?

俺はもっとはっきり会話を聞き取ろうと、扉に耳をくっつけた。

その時、うしろで大きな怒鳴り声がし、
俺たち三人は振り返ると、
廊下の向こうに……グランブル署長の姿があった!

署長はこわい顔してこっちを睨みつけている!

おどれら~!と叫びながら、
ドシン!ドシン!と迫ってくる署長を見て、俺たちは一目散に逃げた。

「ぐわっ、何だコリャー!」

途中でバケツのような物につまづいた俺は、
勢いあまってすっ転び、気が付くと宙に放り出されていた。

おい……ウソだろ!?
俺はただ……リザードンさんに会って入学案内書をもっかい出してくれるよう
頼もうとしただけなのによ……!

それなのによ……何でこうなっちまうんだよ!

か……かはーーーーーっ!

窓からものっそい勢いで飛び出した俺の体は、またたくまに
真っ逆さまに落ちていき……

そして俺は……「目の前が真っ暗になった」。


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