2016年12月23日金曜日

Chapter5:サニーゴ

「くそっ……散々だぜ……」

ゲンナリしながら俺は一人、夜道を歩いていた

結局、俺の入学案内は戻ってこない上に
ピィとププリンまで巻き添えにするというひでぇ事になっちまった。

おまけに、せっかくペリッパーさんから貰った新品の「Vボード」も
転落のショックでぶっ壊れるわで散々だぜホント

ちくしょうめ……
こんな最低最悪な結末になるんだったら、市役所になんぞ忍び込むんじゃなかったぜ。
今となっては完全に「後の祭り」ってやつだがな……

あまりの最悪っぷりに絶望した俺は
何度もため息をついて、ふらふらと夜道を歩き続けた

気がつくと公園のベンチに朦朧と腰かけていた

ぽちゃぽちゃと湧き出る噴水の音をぼんやりと聴きながら
バルビートとイルミーゼのカップルが、淡い光を出して飛ぶのをじっと見た。


くそっ……明日から俺は……
どのツラ下げてピィとププリンに会ったらいいんだ……

三人でシルヴァー学園に入学して、色々なワザを教わって、
いつか「強くてカッチョイイポケモン」になろうって、何度も誓い合った今までの日々
それがウソみてぇに崩れ去っていっちまった。

ずっとその日を楽しみにしてきたのに、まさか結果がこんなザマだとは……

薄情すぎるリザードンさんへの怒りもあったが
それ以上にピィとププリンの二人に、このふざけた惨状を話さなきゃいけないと思うと気が重くなるぜ。

「くそっ……俺は一体どうすりゃいいんだ!!
……!?」

頭を抱えていると突然、遠くから「キャー」と悲鳴が聴こえた気がした


俺は胸騒ぎがして、声のした方へ駆け出すと
いかにも怪しげな連中が「女の子っぽいポケモン」に絡んでいやがった

「何だぁ!?あのサングラス野郎どもは」

サングラスをかけた怪しいゼニガメのグループは
嫌がっている女の子を、無理矢理にでもつれて行こうとしているようだった。

「離してよ!もう~っ」

女の子は逃れようと必死にもがいてる

なんてこった……
間違いねぇ、こいつはセクハラ事件だぜ!!

この平和なポケットタウンでこんな事しでかす腐った奴らがいるとは驚きだ
断じて見過ごすワケにはいかないなこりゃ

「おい待てよ!そこのド腐れども」

ゼニガメ達は一斉に俺をにらみつけた

ふん!そのぐらいでビビるかってんだ
街一番の悪ガキと称されたこの俺、ピチューをなめるなよ
俺は「けむり玉」をボン!!と地面に叩きつけ、そこら中を煙まみれにしてやった。

奴らはゲホゲホと咳き込みうろたえている……ざまぁみろだぜ!

俺は一瞬の隙をつき、女の子の手をグイッと引っ張って
全速力でその場から逃げ出した。


「はぁはぁ……どうやら撒いたみてぇだな。」

街はずれにある小さな川のほとりで俺はゼェゼェ息を切らした

見知らぬ女の子とさんざん走ったおかげで俺の体はガタガタだぜ
こりゃ明日は、全身筋肉痛コース間違いなしだ

夜中にとんだ重労働させられたもんだな!ったくよー。

「大丈夫か?お前」

俺は女の子を振り返り、優しく声をかけた

二本のでこぼこしたツノの間に「セーラー帽子」をかぶったその女の子は
汗だくで、同じようにゼェゼェ息を切らしていた。

「きみさ……ずいぶんめっちゃくちゃだね!」

ずれ気味の帽子を戻しながら、女の子はやや不機嫌そうに言った。

「フツー屋根の上をあんな風に駆け回ったりしないと思うけどな?
それにさ、「けむり玉」なんてものよく持ってたね?
やっぱし普段からイタズラをし慣れてるから?大したやんちゃ坊主だね。きみってさ!」

女の子はヤレヤレという仕草をとり、まるで言いたい放題だった

「でもまぁ……きみのそのむちゃくちゃっぷりのおかげで逃げられたし
そこは感謝しなくちゃね!どうもありがとう」

う。何かすげぇ腹立つぞ……その感謝の仕方!

だいたいよ、女の子がたった一人で夜道を出歩くなんて非常識だぜ
だから妙なチンピラに絡まれるんじゃねぇのかよ。

「俺はピチューってんだ。お前、何て名前なんだ?」
「サニーゴだけど。」

サニーゴ……か。ぐふふふ

よく見りゃこいつ結構カワイイじゃねぇか。年も俺と同じぐらいだし
このままこのカワイ子ちゃんを助けて、ヒーロー気取りってのも悪くないかもしれねぇな。

そんな俺の下心を見抜いたのか
サニーゴは目をパチクリさせ、その後むすっとした。

「あのさぁ。もしや僕のこと「女の子」だと思ってる?」

へ!?
サニーゴの思わぬ発言に俺はたじろいだ。

まさか……女じゃないとでも言うのか?そんな馬鹿な。

「やっぱし!!あ~もうー!
僕は「男の子」だってば!間違えないでくれるかなぁ?」

俺はぶったまげて危うく腰が抜けそうになった

なな……何だとぉー!!
このカワイさで女の子じゃない!?そんな事があっていいのか?
そんな馬鹿な……もはや詐欺だろこりゃ!

俺は顔を近づけて、まじまじとサニーゴの全身を見回した

「な、何さ。気持ち悪いなぁ……まだ疑ってるわけ?」

俺は強くコクッと頷くと
サニーゴは大きなため息をついた

「はぁ~……いっつもこうだ!
みんなしてカン違いしてさ!もう嫌んなっちゃうよ」

どうやら「女の子と間違われる」のはいつもの事らしいな
そりゃそうだろう……
こんな可愛いナリしといて男だなんて、誰も思わねぇからな普通。

さっきのサングラスのゼニガメ達にしても
こいつがよもや男だなんて、夢にも思わなかっただろうよ

ったく、あほくせー!!

男だったら用ナシだ!とっとと何処へなりとも行っちまうがいい
俺はウチへ帰らせてもらうからな

「あ、ちょっと待ってよ!」

サニーゴはタタッと追いかけてきた


「ねえってば!」
「しつけー!まだ何か用かよ?」

どこまでもついてくるサニーゴに俺はたまらず構ってしまった

「何って……僕のこと助けるんでしょ?
こうゆうのって、最後まで責任持つもんじゃないの?」

俺はピタッと足を止めた

まぁ。そりゃそうかもだけどよ……
だったら俺に、一体どうして欲しいってんだよ?

サニーゴはニマッと笑って前へ出た

「あのさ。僕、ちょっと「仕事」を抜け出してきちゃってさ
隠れる場所とか欲しいんだよねぇ?」

ずこっ!!……サボりかよ!
仕事を抜け出したって、お前何の仕事してるんだよ?

「市長さ。」

サニーゴはけろりとそう答えた。

市長って……
ははは!いくらなんでも冗談きついぜ
だってよ、お前どうみてもまだ「ガキんちょ」じゃねぇか

「その顔、信じてないでしょ?」
「あー分かった分かった!ほんじゃあ俺ん家へ来いよ
ようは寝泊まりする所が欲しいってんだろ。そんぐらい何とかしてやっから」

サニーゴはやや不満そうだったが
図星を突かれたのか「ぐぬぬ」という顔して、しぶしぶと頷いた。

こいつは可愛げのないマセガキだがよ、この最悪な夜を紛らわしてくれると考えりゃ
一緒に過ごして損は無いだろうぜ。

かくして俺は、たまたま助けたこのキザな「市長」をウチに泊める事にした。



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