2016年12月2日金曜日

Chapter1:ピチューとカプ・コケコ

「朝ですぞ。ほれ起きんかピチュー!」

何者かに布団をまくられ、俺は目を覚ました。

……
なんだってんだよ!まだ朝の5時前じゃねぇか。
他人がぐっすり寝てる時にムリヤリ起こしにくるとは、ふてぇヤツだ。

こんな事しでかすポケモンは、"あの人"以外ありえないぞ。




「アローラ~!いつも早起きカプじいですぞ。」
「やっぱりカプじい!自重しろよ!」

俺は超スピードでベッドから飛び降り、文句を言った。

この人はカプ・コケコ。いつもアローラ~って謎の挨拶をしてくるジイさんで、
俺やみんなからは敬愛を込めて「カプじい」って呼ばれてるんだ。
物忘れがひどくて、いつもとぼけた妙な喋り方をする。

たま~に今日みたく、お喋りの相手を求めて
朝っぱらから誰かの家にやってくるってワケだ。迷惑なハナシだぜ!



「ぐふぁ~!で、今日は何の用だ。カプじい」

俺はあくびしながら、あからさまに面倒臭そうに言ってやった。

「ほう~。これを見てもそんな事が言えますかな?」

カプじいはニヤリと意地悪そうな笑いを浮かべると、手に持ってたバスケットをドンッと目の前に置いた。
俺はおそるおそる中を見た。


うお!こいつは……モモンの実にチイラの実にナナの実!
「木の実」の詰め合わせじゃねぇか!

カプじいは愉快そうに大笑いした。

「わしん家の畑で収穫した作物ぢゃよ。おヌシも一人暮らしでずいぶん苦労しておろう、
ほんのおすそわけですぞ。一緒に食べる以外ありえませんな。」

「カ、カプじい~!」

まさかの差し入れに嬉しくなった俺は、がつがつムシャムシャと
木の実を食べながら、カプじいとお喋りした。

こじんまりした丸い部屋が、だんだんと明るくなっていく……。



俺はピチュー。
ポケットタウンって街に住んでる、ちょい悪のイカした電気ネズミだ。
今は街はずれにあるツリーハウスで一人暮らしをしてる。

親は3年前、どっかへ夜逃げした。


両親ともそれぞれ、しょっちゅう別のポケモンと不倫をしては口喧嘩を繰り返したもんだ。
あげくの果てに、メッタクソな投資をしまくって自爆し、
最後にはおっそろしい借金取りにつけ狙われるはめになって、俺だけ残してどっかトンズラしやがった。
笑っちまうぐれぇロクデナシの親だぜ。ホント

惨めな7歳児だった俺は、カプ・コケコに守られて、
それ以来、ずっとこのツリーハウスに住まわしてもらってるってワケだ。

はっきり言ってこのジイさんには、感謝してもしきれないぜ。


「プハ~!ごちそうさん。」

木の実をぜんぶ食べ終えた俺とカプじいは、ハラいっぱいになった。

もうすっかり朝だ。
外でヤヤコマの母ちゃんが「ヒンカララ」とさえずってるのが聴こえる。

よーし、さっそく遊びにいくとすっか!
「きぃつけてな~!」と笑顔で手を振ってるカプじいに別れを告げ、俺は意気揚々と駆け出した。


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